(2)忘れられない、ひとこと
2019/01/30 00:00
「ニードルフェルトに羊毛を使うなんて、もったいないじゃないか。」 2年ほど前にある男性から言われた言葉に、私は頭が一瞬真っ白になってしまいました。なにせ目の前には私の作った人形。その男性は長らく商業用フェルト生地の生産に携わり、個人の作家とはまるで違ったフェルト化の手法を確立し、その経験談はとても斬新で厚みがあるから。 本来フェルティングニードルは、どんな繊維でもつなぐことができる古布再生の道具であり、100年前から日本に存在していました。いわばクズ布をリサイクルするための道具。羊毛ほどフェルト化が容易な繊維は他には存在しないのに「わざわざフェルティングニードルを使う意味はあるのかい?」というわけです。 私は恵まれた時代に生まれた苦労無き者として、羊毛を日々消費しています。他の繊維ではこんな細かい作業はできないし、なによりも優しい羊毛の感触や自由さが楽しい。でもそれだけじゃあ、おそらくダメなのです。感覚的過ぎて、彼を納得させる言葉とはいえないのです。 さて、どうする? 私が今後どう作って、どう生きれば、あの言葉を覆すことができるだろう。これが私の“生存目標”なのかもしれません。 早春の草むらをそっとかき分けて見つけた、花と小鳥たち。小さな子どもたちの着る服は、染めたシルク布と羊毛で作った布フェルトで、羊毛の人形との相性は抜群です。 毛糸だま 2011年春 149号掲載
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