(19)音の楽しみ
2019/01/30 00:00
私が幼かったころ、四つ年上の姉は自室で夜な夜なラジオを聞いていました。大好きな歌手のトークや怪談話を楽しんでいたようですが、廊下に漏れる姉の笑い声は、密やかで不思議で。この謎は私が三十路を過ぎてようやく身を持って解かれます。 子どもを持ってからテレビをつける習慣を改め、仕事をするときはもっぱらラジオ。好きなタレントが「そういえばこの間さあ」と耳元で話し出す体感の近さが最初のツボでした。会ったことは無いけど、声を聞きながら彼や彼女の顔の向きや身振りを絶えず感じます。同じく姿は見えないけど、ゲストのトークもまた多彩。落語家、彫刻家から厩務員、ペンギン研究家まであらゆるプロの珍しいお話が積り、時間に埋もれていきます。 意外と好きなのはラジオショッピング。見えないブランド米をフーフーハフハフと食べる音だけで、ツヤツヤの銀シャリが脳裏に浮かぶのです。自分の中から湧くイメージはとても自由でここちいい。そう、この感じ。自分の体の中に備わっているものが揺さぶられるから、楽しい。ラジオ仲間、もっと増えないかしら。 本物の着物地で衣装を揃えてみました。母兎は夏用に紗の帯です 毛糸だま 2015年夏 166号掲載