小田原真喜子先生の カリグラフィーの矜持 第1回~カリグラフィーという言葉の誕生~

 

 

 今では西洋書道として、日本でも知られるようになった「カリグラフィー」。

 近年、カリグラフィーの書体の中で、カッパープレート体の書体を基に、アルファベットをアレンジした形が広まり、さらに感心を持つ方々も増えてきております。 時代の流れと共に、英文字は自然な形で日常の生活のなかで浸透し、カリグラフィー文字も使われているように思います。
 

 今回は、カリグラフィーという言葉が誕生してきたお話をさせていただきます。

 カリグラフィーとは、ギリシャ語のカリグラフィア(Kalliguraphia)に由来する言葉で、文字を美しく見せるための手法を意味しているといわれています。


 15世紀に印刷技術が発明・普及されるまでは、文字はすべて手書きでした。手書きの書物は大変高価なもので宝物のように扱われていました。そしてその中心にあったのが、修道院でした。書物は文化の中心である修道院の写実室で一文字一文字丹念に、長い年月をかけて書き写されて作られました。これには、装飾や挿絵も施され非常に美しい書物でした。これが「彩色写本」と言われるものです。ヨーロッパにおける文字の発達には、キリスト教の発展と伝播が深く関わっており、宗教書として数々の美しい彩色写本が残されております。


 

 そして、17世紀初めごろ「カリグラフィー」という言葉が生まれます。

 印刷機の発明以降、写本は次第にすたれ、一部の美術品や聖職用を除き手で書くことはまれになりました。一方、産業革命以降、それまで貴族や上流社会の宝物として所有されてきた手書きの書が、印刷により安価にしかも大量に出回り、一般の人々の手にも渡るようになりました。美しいカリグラフィー文字も一般の人々の目にも触れ、普及されてきました。これは文化の革命であり、一般の人々に知識と教養を広める大きな節目となりました。

 

 ところが近代化・機械化がさらに進み印刷術の分野でも美しさより機能性・経済性を求めるようになりました。かつての職人達は労働者となり、労働の喜びや手仕事の美しさも失われてしまうこととなりました。


 
 人々が機械的に動く殺伐とした冷たい世界(まさにチャップリンのモダン・タイムスの世界)に疑問を抱き、これに反発する芸術家・建築家たちによりゴシック建築復興運動がおこりました。こうした中でイギリスの美術工芸職人ウイリアム・モリスたちが「アーツ・アンド・クラフツ運動」を起こし、文字や書籍に対する見直しが進められ、手書き文字の芸術的美しさも再認識されるようになりました。そして、ウイリアム・モリスはカリグラフィーと草花で彩色された詩の本『A Book of Verse(ア・ブック・オブ・ヴァース)」を制作し、カリグラフィー復興のきっかけとなりました。

 このモリスの活動に強く影響を受けたのは、現代カリグラフィーの祖となるエドワード・ジョンストンでした。彼は歴史的な書体を研究し、自ら彩色写本を制作し、また新しい書体もつくりあげ、そして実用的なテキストを出版しています。現代カリグラフィーの普及に大いに貢献することとなりました。

『カリグラフィー本格入門独習ブック』(小田原真喜子 著)には、モリスの「詩の本」の一部も掲載されている



 長い人々の歴史と共に発展と変換を続けてきたカリグラフィーです。今でも多くのカリグラファー達により新たな書体の変化や手法が考案され、また多くの装飾法も考えられ、さらなる発展を目指しています。多くの手工芸もそうであるように、手づくり・手書きの美しさは、独自のものであり芸術品です。
 参考としてテキストや資料から学び、知識を得ることもできます。練習過程を楽しみながら新しい潤いが生活の中にも生まれ、また社会貢献にも繋がって、友好の輪が広がっていったら嬉しいです。

 

   これからも、自分の能力や立場に誇りをもって、最後までカリグラフィーの志を遂げられたらと思っております。
   新たな手づくりタウンにカリグラフィーも参加させていただき、カリグラフィーの魅力を皆様にお伝え出来たらと思っております。

小田原真喜子

   097Z009 〈日本手芸普及協会〉カリグラフィープレコース     

  最も関心の深い人気の書体であるイタリック体とカッパープレート体の2書体をご紹介した通信アプリです。手書き文字の楽しさとカード制作にぜひチャレンジしてください!
 

投稿者名:カリグラファー 小田原真喜子