ムーミンとめぐる、手づくりの時間 - 第6回「朝のお部屋と、小さなお針箱」(最終話)

ピンポーン。

少し高めの音に、みどりはキッチンから顔を上げた。
時計を見ると、まだ朝の時間。
カーテン越しの光もやわらかく、部屋は静かだった。


ドアを開けると、宅急便の箱がひとつ。
受け取った段ボールは思ったより軽くて、
それなのに、胸の奥が少し弾む。


(来たんだ)


テーブルの上に箱を置き、カッターでそっとテープを切る。
中から現れたのは、桐の箱。
ふたの表面には、リトルミイの姿が浮かび上がっていた。


それはプリントではなく、木に直接、
レーザー彫刻で描かれたアートだった。
線はくっきりしているのに、木目となじんでいて、
少し和の雰囲気も感じられる。


「……きれい」


CRAFTINGオリジナル、
リトルミイフェアの限定アートを使ったお針箱。
特別感があるのに、どこか落ち着いていて、
飾りたくなる佇まいだった。

ふたを開けると、さらに驚く。
中には、針、糸、はさみ、メジャー、針山。
お裁縫に必要な道具が、最初から一式そろっている。


しかも、どれも同じ雰囲気でまとめられていて、
「とりあえず入っている」感じがしない。


箱の底には、
限定アートをプリントしたオリジナル生地も入っていた。
手のひらより少し大きいくらいで、
ちょっとした布小物なら、すぐに作れそうなサイズだ。


「これなら……本当に、すぐ始められるんだ」


何を買い足せばいいか迷わなくていい。
道具選びで立ち止まらなくていい。


この箱ひとつで、
“作る時間”がちゃんと用意されている。


お針箱というより、
小さな「お裁縫の入口」みたいだと思った。

思い返せば、この数週間。
裁縫バッグを迎え、
ほどけていたスカートの裾を直し、
パンチニードルに挑戦して、
クロスステッチで静かな時間を味わった。


どれも大きな変化ではない。
けれど、手を動かすたびに、
自分の呼吸や気持ちに目を向ける時間が増えていた。


北欧の暮らしで大切にされている「ウェルビーイング」という言葉を、
以前はなんとなく聞き流していたけれど、
今なら少しわかる気がする。


無理に頑張らないこと。
好きなものに囲まれて、
今の自分をちゃんと感じること。


みどりはお針箱の中を、しばらく眺めていた。
指先で桐箱の縁に触れると、さらりとした感触が心地いい。


(お家にひとつあると嬉しい、って、こういうことなんだ)


ふたを閉じると、箱はテーブルの端にすっと収まった。
朝の光の中で、それはもうずっと前からそこにあったように見える。


みどりはコーヒーを淹れながら、
今日何を作ろうか、と考え始めていた。


その時間は、まだ静かで、
でも確かに、あたたかかった。


(完結)



 

 

物語に登場した商品はこちら

 

       CF9958Y02 リトルミイ お針箱     

      桐箱の蓋にはリトルミイのアートがレーザー彫刻でプリントされていて、お家にひとつあると嬉しいお裁縫道具のセットです。

投稿者名:手づくりタウン事務局