「九州、大牟田に素晴らしい押し花作品を作る人がいるので会ってほしい」と聞いたのはかれこれ30数年も前の事である。
押し花と言えば子供のころ夏休みの宿題などで電話帳に花を挟んで作ったことのある人は多いと思う。あのセピア色のイメージだ。
ところが大牟田で見る作品たちは、セピアではなく自然の色にほぼ近い状態できれいに額に収まっており、まるで自然の絵画を見ているようで新鮮な驚きであった。聞くと、専用の花押しシートを使ってほとんどの草花はほぼ元の色を保って乾燥でき、さらに額装では密封することで酸化による色褪せをかなりの期間抑えることができるとのことである。


色鮮やかな押し花作品。
草花を使っての様々な風景やデザインは、自然の色が醸し出すハーモニーとでも言うか、どの作品も遜色なく美しい。この新たな押し花の手法を手づくりが好きなたくさんの方たちにお薦めしてみたいーそんな思いがこみ上げてきた。
早速、基礎から学ぶカリキュラムの作成に着手した。そして普及方法については当社が持つ編物教室のネットワークを思い浮かべた。全国津々浦々の編物教室には各地の支部を通じて編物技術や作品提案を行っている。
「そうだ、まずは支部長の先生方にこの押し花カリキュラムを体験していただこう」
編物では難しい技法も多用し、作品作りに数週間かかる。押し花では草花の乾燥には何日かは要るが、作画は一日でも可能であり、また編物教室のオフシーズンともいえる時期に押し花が楽しめることもあり、支部長の先生方にはすんなりと受け入れられた。色鮮やかな花々を使っての作品作りはあっという間に編物教室での人気アイテムになっていった。
押し花教室の生徒さん募集には(民営化前の)郵便局が各地で使われた。地域に根付いた郵便局は格好のロケーションで、ロビーを使って作品展や体験会には多くの人が立ち寄り、体験会の押し花ハガキづくりは局の売上にもなって喜ばれたりした。
こうして押し花のインストラクターさんは僅か5年ほどでその数は1万人にも達し、最盛期には3万人を超えた。
全国各地で作品展が開催され、松本では花いっぱい運動とのコラボ、母の日に押し花はがきによるメッセージ運動を始めた小学校もあった。99歳の方による100種類の花を使った押し花の大作の紹介をしてくれたNHK四国。長野オリンピックでは海外からの選手たちに押し花作品を差し上げ、とても喜ばれた。また、病院に多くの押し花作品を寄贈し院内が暖かい雰囲気になって良かったといわれたこともあった。東日本大震災で流された押し花作品が奇跡的に戻って開かれた作品展にも多くの人が足を運び、感動を共有した。
花は人々の気持ちを優しくしてくれる。また、押し花作品から作者の想いが様々に伝わってくる。愛好者たちはそれぞれの地元の植物を押し花にして交換会も良く行われた。地元にない草花のめずらしさと併せて遠いところに思いをはせ、そこに住む相手の気持ちも受け取る。
毎年開かれた全国各地から参加されるインストラクターさん達との大会で、私はいつも皆さんにこうお伝えした。
「幸せの種まきをこれからも一緒に進めていきましょう!」

押し花はがきのコンクール作品集や、押し花を楽しむ方々110人のエッセイ集など刊行された
☆押し花の詳しい情報はこちらから
https://www.tezukuritown.com/nv/c/cflower/




