毎年開催のキルトジャパン賞も今年で25回目を迎えることになりました。作品はA部門:ミニタペストリー「テーマ:私の好きなもの」とB部門:袋ものの2部門で募集。本審査は、沢田淳子さん、花岡 瞳さん、石上友美(本誌編集長)によって行われ、各賞が決定しました。協賛社賞も合わせ、計142点の入賞作品を発表します。
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グランプリ
中村房子(三重県)
「やっぱり赤が好き」 73×73cm
- 作者のコメント
- 赤は私の元気の源です。作るのも着るのも、見るのも食べるのも、やっぱり赤が好き。
- 審査員からのコメント
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沢田:色は2色しか使われていないのに、デザインがダイナミックで力強さが表現されているところに魅力を感じました。
花岡:ミシンですべてのピースワークを行っているのですが、緻密で見事なでき映えです。また全体のデザインがよく、2色使いとは思えない華やかさがあります。
石上:プリントの柄とピースワークをうまく組み合わせて錯覚をさせる布使いの巧みさに目をひかれました。赤と白だけで大胆な構図には作者のいさぎよさを感じました。
金賞
浅田純子(愛知県)
「Joyful Broad bean」 80×80cm
- 作者のコメント
- さやからかわいらしい豆たちがコロコロと出てきました。プリント生地でおしゃれして、春の柔らかい日射しを楽しんでいます。
- 審査員からのコメント
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沢田:「私の好きなもの」というテーマ性によく合っている作品です。そら豆の色、形がユニークで、さまざまなテクニックを使っての表現力が秀逸でした。
花岡:作者自身が楽しみながらキルトを作っている様子がよく伝わってくる素敵な作品です。遊び心がありながらも完成度が高いですね。
石上:そら豆がとてもおいしそうに見えました。テーマをよくとらえた表現力のある作品ですね。
福島純子(大阪府)
「3-D Orange Peel Bag」 28×37×15cm
- 作者のコメント
- 平面でもかわいいオレンジピールのパターンを立体的にしてみました。お気に入りの異素材の生地で、カジュアルにまとめました。
- 審査員からのコメント
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沢田:白とグレーの色使いのセンスがよくシックなバッグです。オレンジピールの立体版ですが上手に仕上げていますね。
花岡:色のセンスが素晴らしく持ってみたいなと思いました。丸いピースをただつなぐのではなく、より立体的なバッグになるように工夫したところに脱帽です。
石上:立体パターンを生かした新鮮なデザインで、オリジナリティーを感じました。異素材をうまく組み合わせていて見事です。
銀賞
岩本 栄(広島県)
「瓦礫の街のきれいな花、“to U”を聞きながら」 79×79cm
- 作者のコメント
- 昨年の夏、広島に大きな災害がありました。雨と土に埋もれた街に光が射し、また、希望の花が咲くようにと想って、制作しました。
- 審査員からのコメント
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沢田:ハンドとミシンを上手に組み合わせた技術の高い作品です。下の方の暗い小さな花から上へ向かってのびやかなラインがデザインされていて印象に残ります。
花岡:曲線をつなげる難しさをデザインの中で上手に生かしています。ダークな色使いなのに光、希望を感じさせる上質な作品です。
石上:押さえた色調の中にも力強さがあり、静かな生命力を感じました。
近藤紀子(愛知県)
「MY FAVORITE GOODS!」 78×78cm
- 作者のコメント
- 還暦を迎えた自分への祝福キルトです。ユニオンジャックを赤の山道テープで強調し、元気いっぱいのキルトになったと思います。
- 審査員からのコメント
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沢田:トラディショナルやオールドパターン、アップリケなどいろいろな技術がバランスよく収まったデザインです。キルトを作ることが好きという気持ちがにじみでていますね。
花岡:ハンドキルトの高い技術を用いた細かいピースワークが素晴らしいですね。つなぐ楽しさが伝わってくる作品です。
石上:キルトのいろいろな要素が詰め込まれていながらバランスよくまとまっています。ボーダーの赤とピースワークの間にはさまれた細い赤のラインの使い方が効果的で、丸いアップリケを置くことでゆったりした印象を受けました。
清水朝子(兵庫県)
「海の中で」 15×30×6cm
- 作者のコメント
- 私の頭の中で泳ぐさかなを作りました。リアルでかわいい、が表現できたかな? これからももっと“創造”を楽しみたいです。
- 審査員からのコメント
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沢田:形がユニークでかわいらしい作品です。バッグとしての実用性も考えられています。アップリケの小さい魚たちの配色や口の部分の遊びが楽しいですね。
花岡:ユニークなデザインで新しさを感じる作品です。楽しさいっぱいの自由な発想がうれしいですね。
石上:絵本の『スイミー』を思い出しました。個性的で味のある作品です。
山田千鶴子(熊本県)
「きらめいて ダイヤモンド」 33×42×6cm
- 作者のコメント
- 「オン」のスイッチが入り、小さなピースの集まりが一枚の大きな布に。出掛ける時の一つのアクセサリーになって欲しいです。
- 審査員からのコメント
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沢田:ピースワークが素晴らしく技術の高さに驚きました。きらめくようなデザインが素敵ですね。
花岡:これぞパッチワークという作品ですね。花火のような柄と落ち着いた色合いが着物にも合いそうなバッグです。
石上:宇宙を感じさせるデザインと配色が見事で、手が込んでいるのにすっきり仕上がっています。仕上がりのきれいさにも圧倒されました。
審査員賞 A部門(ミニタペストリー)
安永眞智子(福岡県)
「Come on a my House」 78×78cm
- 作者のコメント
- 26年の転勤生活を終え、定年を迎えた夫と二人これまで支えて下さった周りの方々や家族に感謝して暮らしています。カモナマイハウス。
- 審査員からのコメント
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沢田:ハナミズキなどの花々や好きなものに囲まれた暮らしを表現した楽しい作品。パターンをうまく使いながら、明るくクリエイティブな感じが表現できました。
篠崎陽子(東京都)
「カモミールの森」 77×77cm
- 作者のコメント
- 太陽と草の香りの中、大好きな花の妖精の存在を信じていた子供の頃、大人になった今、当時の気持ちを作品に表現しました。
- 審査員からのコメント
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花岡:清楚でシンプルな作品。グリーンと白の二色使いの刺しゅうがかわいらしく印象に残りました。
鈴木惠子(北海道)
「Round & Round」 70.5×71.5cm
- 作者のコメント
- 池の上に浮かぶ落ち葉をイメージして、円のキルティングラインの上にアップリケを乗せて、動きが見えるようにしてみました。
- 審査員からのコメント
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石上:引き算上手でミニマムなデザインにひかれました。葉っぱがぐるぐるまわる動きをみせることで、内側から外へ向けてキルトのラインに広がりを持たせていて、躍動感のある作品です。
福原和歌子(北海道)
「Quilts Time!」 80×80cm
- 作者のコメント
- キルトを作っている時間が大好きです。家の庭に咲いている花たちを、デザインしました。
- 審査員からのコメント
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沢田:手仕事が印象的なボルティモアを思わせる作品です。和を意識したデザインのアップリケにオリジナリティーがあります。ハンドのテクニックがしっかりしていますね。
花岡:完成度の高い和のボルティモアです。アップリケがきれいで、仕上げも丁寧に作られています。
石上:和の花でボルティモアを作るおもしろさが魅力的な作品です。少しボーダーが強すぎて、中のアップリケより主張してしまっているように感じたところは残念でした。
審査員賞 B部門(袋もの)
大音和江(京都府)
「柿渋のバッグ」 38×37×4cm
- 作者のコメント
- 柿渋のはぎれをつなぎ合わせてミシンでキルト。モールも一部柿渋で染め、モールでいろいろと遊んでみました。
- 審査員からのコメント
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沢田:いろいろな素材をうまく組み合わせています。きちんとした技術がある上に、コードや毛糸、モールなどのアレンジが伸び伸びとしたアクセントになっていて構成力があります。仕上げのミシンも上手にできています。
山中久美子(広島県)
「おしゃれ完了、5分前!」 28.5×42×15cm
- 作者のコメント
- お出掛け5分前にドタバタおしゃれする様子をバッグにしました。異素材やビーズなどで大人かわいい雰囲気が出るよう工夫しました。
- 審査員からのコメント
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花岡:とてもおしゃれな感じで、使いやすいすっきりした形のバッグです。ラメの刺しゅう糸を上手に使っています。ミシン糸にもラメを使っていてキラキラするところが大人のおしゃれですね。
小松真由美(秋田県)
「この布、この色好きなんだから」 21.5×33×5cm
- 作者のコメント
- お気に入りの3枚のゴブラン織りの布をすべて使いバッグを作りました。ファスナーを縦横に使い機能性が高まるようにしました。
- 審査員からのコメント
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石上:ベルベット、レザー、コーデュロイなど質感の違う素材を使いながらも、ブルーとグリーンの色合いをうまく合わせることでごちゃごちゃ感のないバッグになっています。ポケットやファスナーの使い方が楽しく使いやすいデザインですね。
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