黒羽志寿子さん

黒羽志寿子さん 山口県徳山市生まれ。1975年から2年間、アメリカ・メリーランド州ベゼスダに在住中にキルトに出合い、独学でキルトを作り始める。帰国後、黒羽志寿子キルトサークルを主宰。藍染めや更紗など日本の古布を使ったキルトで独自の世界を築く。1992年銀座ミキモトホールにて個展。1985年ニューヨークの日本クラブにて「藍染めキルト展」を開催、その展示作品が「1987 THE QUILT ENGAGEMENT CALENDER」「キルトダイジェスト5」に掲載。1990年オランダ「フィーリング1990」に作品発表。1992年スイス、1993年フランスなど海外のキルト展に出品。1993年インディアナ州立美術館で講師。著書に「黒羽志寿子のパッチワークキルト 藍染めと更紗」(文化出版局)、「黒羽志寿子のかんたんミシンパッチワーク」(パッチワーク通信社)、「ミシンでかんたん 黒羽志寿子の パッチワークキルト」(日本ヴォーグ社)など多数。1997年東京・西荻に藍染めを中心とした古布と作品の店「nuno space 黒羽」を開店。 関連本 パッチワークキルト 教えたい、習いたい 黒羽志寿子の小ものづくり ピースワークからデザインまで 基本からレッスン 黒羽志寿子のパッチワークおさらい帖

はじめに布がある。その布を生かせる自己表現が見つかるまで、何度でも布を眺め、触る。「藍の布なら、どうにか自分の思いどおりに扱えるようになったかな」と黒羽さんが言えるまでに、20年がたった。 その間変わらず見つめてきたのは、「キルトの中にその人がいる」ということだった。人の命には限りがあるが、キルトはそれを超えて次代に受け継がれていく。針目に縫い込まれた作者の人生が、垣間見える。営々と続く人間の生への、限りない愛惜と共感。そんな思いを抱きながら、風のような透明感のある、音が聴こえてくるようなキルトを作りたいという。 黒羽さんとキルトの出合いは、まさに運命的だった。通信社の記者をしていたご主人の海外赴任で、ワシントンに着いた三日目、近所の人に連れられて行ったマーケットの手作り品の店で、一枚の古いキルトが目に飛び込んできた。「美しいという通り一遍の感動ではなく、体の芯まで揺さぶられるような衝撃でしたね。縫い目も粗い百五十年前の一枚のキルトが、私の人生をまったく変えた一瞬でした。」お店の人は黒羽さんの熱心さを見て、作品を片手にいろいろ説明してくれる。言葉はわからないながらも以心伝心で、最初に作ったのがナインパッチのクッションだった。そして娘さんのベッドカバー。 2年間のアメリカ暮らしから帰国する時、黒羽さんの胸の中には、日本でキルトを広めたいという思いがふくらんでいた。しかし当時の日本はパッチワークはちらほら出てきていたが、まだキルト綿すら入手が困難な時代。黒羽さんはキルト綿を探しに行った吉祥寺の「コットンフィールド」で、教室を開いて教えてほしいと頼まれる。これがキルト教室の始まりとなった。以後いくつかの生地屋さんに頼まれて、教室を開くことになる。 「布は新しいものや古いもの、木綿、麻、ウール、化繊と素材もさまざまにありますが、私は『はじめに布がある』だと思うんです。その布がどんなふうに使ってほしがっているか、どういうものにしたら一番生きてくるか、キルトはそこから始まるんですね」 買いためた布を出したりしまったりして、迷う時間も多い。でもそうやって布と対話する時間を重ねながら、自分の考えを練っていく。それが、自分だけの作品へと導いてくれる大切な道程なのではないだろうか。 そんな黒羽さんの「お宝布」は骨董の銭函に入れて、いつでも見られるように居間に置いてある。制作に疲れた時、あるいは考えが煮詰まった時、その函をあけては布片を一枚一枚手に取る。すると心が柔らかくほぐれていくのを感じる。 ―本文より一部抜粋― キルトジャパン2001年7月号より
  • 『夢の窓』2001年制作 66.4×166.4cm
    夢を見ているときは、物語としてまとまった筋のキルトになっているのに、目覚めるととりとめがなくなっていてもどかしい…。儚い夢の中でも遊んでいる布の世界。まだまだキルトの夢はたくさんある。どの窓を開けようか…。そんな想いをたくさんの種類の藍に託した作品。藍、型染め、縞など
  • 縞や絣、無地の藍染め布を中心に、芭蕉布、しな布、酒袋、裂き織り、刺し子など、好きな布ばかりが籠の中にぎっしりと詰まっている。「イメージを喚起させるような布に出合った時は、必要な分だけといわずに大めに買った方がよい。」と生徒さんたちにもアドバイス。
  • 「ミシンほどの働き者はいない、私の手がもう4本あるほど」と、ピーシングにはもっぱらミシンを愛用。まっすぐ縫うコツは、針位置を設定したら布端を押さえに合わせて布を送ること、そして続けて一気に縫わないこと。なるほど黒羽さんの場合、ダダッ、ダダッ、ダダッ…とミシンの音はリズム良く途切れる。「縫製工場でもこんな音がするでしょ」と黒羽さん。
  • 『錦繍』1994年制作 148×143cm
    地味な縮緬を引き寄せ、華やかな秋をイメージして制作。初めてカーブのあるピーシングをミシンで挑戦してみた作品。縮緬、綸子、更紗、アメリカコットン

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