アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布 ─2019年12月─

アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布

─2019年12月20日─

アフガニスタンの北西部に位置するヘラート州は冬の寒さが厳しいところで、気温はマイナス10℃を下回ることもあります。加えて、2017年後半から続く深刻な干ばつ、ひるがえっては2019年3月には一部で鉄砲水が発生し、唯一ともいうべき産業である農作物が大きな打撃を受けています。

収穫が得られない、収入源である家畜が死亡する等、ヘラートの人々の生活は厳しい状態へと追い込まれています。こうした食糧不足や生活困窮が続き、子どもたちの発育にも影響が出ています。2019年にヘラート州の一部地域で実施された栄養調査では、5歳未満児の24%の子どもたちが「中度急性栄養不良」状態にあることがわかりました。

貧困、異常気象、食糧不足など、多くの困難に直面する子どもたちにとって、厳しい冬はさらに過酷な状況を招きます。しかし、厳しい経済状態の中、ヘラートの多くの家庭では防寒着を子どもたちに買い与える経済的余裕がありません。多くの子どもたちが暖かい衣類や家がないために、厳しい寒さが原因で病気にかかり、不幸にも命を落としてしまうこともあります。

世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろうプロジェクト アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布─2019年12月─
▲アフガニスタンのヘラート市でワールド・ビジョン・アフガニスタンが運営するストリート・チルドレン・センターにて


1992年から続く「世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろう」プロジェクトでは、アフガニスタンの子どもたちへ2016年から継続して手編み作品を贈っています。日本の人々からの贈り物は、子どもたちをアフガニスタンの厳しい寒さから守り、そして彼ら一人ひとりが、かけがえのない存在であることを伝えています。

世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろうプロジェクト アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布─2019年12月─


4回目となった2019年は、日本全国の皆さまに手編みのセーター1,421枚、ベスト9枚、帽子2,083点、マフラー・スカーフ1,654枚、手袋6組、ポンチョ・カーディガン・ジャケット4点、靴下1ペア、計5,178点の編み物作品をお寄せいただきました。これを2019年12月15日~19日にアフガニスタンのヘラート市でワールド・ビジョン・アフガニスタンが運営するストリート・チルドレン・センターにて贈呈式を行い、合計2,083名の子どもたち に編み物作品を手渡しました。

このなかから、日本では小学校4年生から6年生にあたる年齢の子どもたちの様子をご報告いたします。



カイス君(12歳)

「本当?本当に僕がもらってもいいの?あとで取り上げたりしない?」あたたかくて新品のセーターをもらったカイス君は驚きを隠せません。

カイス君は、ワールド・ビジョンがアフガニスタンで運営するストリート・チルドレン・センターで支援を受ける子どもの一人です。センターでは心理的ケアのほか、教育や保健面での支援を受けてきました。
いつもは青果市場で、やってきたお客さんにプラスチックの袋を売る仕事をしています。毎日の稼ぎはお母さんに渡して、食べるものや生活用品を買ってもらいます。市場が閉まっている金曜日だけは、友達と遊ぶことができます。

「自分のために冬用のシャツを買おうとして、頑張ってお金を貯めてたんだ。冬になるとやっぱりあったかい服が欲しくなるよ。」

世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろうプロジェクト アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布─2019年12月─
▲カイス君(12 歳)


遠い日本からはるばる運ばれてきたセーターが、本当にカイス君のために贈られたことをワールド・ビジョンのスタッフに教えられて安心すると、この1年間貯めてきたお金は、お母さんの新しい服を買うために使うことにしました。


「仕事が終わるころには日も暮れて、本当に寒くなるんだ。うちは暖炉がなくて冷えるから、このセーターはとてもうれしいです。」


世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろうプロジェクト アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布─2019年12月─



ソマヤちゃん(11歳)

ソマヤちゃんは、ピスタチオの殻を割ったり、サフランの花を洗浄する仕事をしています。家族の経済状況は厳しく、11歳のソマヤちゃんにとってもつらい毎日です。
お父さんは病気で仕事ができないので、お母さんと一緒に家計を助けています。少ない収入は食料や生活に必要なものを買うのにやっとで、防寒具を買う余裕はありません。

「昨年、古着屋さんで服を買ってもらったんだけど、サイズが小さくなっちゃって。お母さんに新しい服が欲しいってお願いしたいけど、お金がないからダメよ、って叱られると思って言いだせないの。でも今日、新しくてあったかい服をもらったから、とっても嬉しい。セーターと、帽子と、マフラーももらったの!」

世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろうプロジェクト アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布─2019年12月─
▲ソマヤちゃん(11歳)


セーターにつけられたラベルを見て、「これはなんだろう?」

世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろうプロジェクト アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布─2019年12月─


ワールド・ビジョンのスタッフから、アフガニスタンの子どもたちのことを思ってセーターを編んでくださった日本の心優しい方のお名前が書かれていることを教えられて、嬉しそうにこう返します。
「私も日本の人たちのことが大好きよ、だって私と友だちにこんなに素敵なプレゼントを贈ってくれるんだもの。いつか私も、困っている子どもにあったかい洋服をプレゼントしたい。きっと喜んでくれるから。」



ヤーハ君(10歳)

ヤーハ君も働いて家計を助ける生活をしています。街に落ちているプラスチックのボトルや、金属の破片や紙を拾って、業者に買ってもらいます。
一日の稼ぎは2米ドル(約230 円)くらいです。家に帰るとお父さんに稼ぎをすべて渡しています。お父さんは歳をとっていて、働けないのです。

世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろうプロジェクト アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布─2019年12月─
▲ヤーハ君(10歳)


「お父さんは毎年一回、ラマダン明けのイードのお祭りのときには新しい服を買ってくれるんだ。イードが冬だったらいいんだけど、暑い時期なんだよね。だからセーターとかは買ってもらえないの。近所のお兄さんが、自分には小さくなった防寒具をこないだくれたけど、もう小さくなっちゃった。あったかい服がないと仕事をするのはとても辛いよ。」

世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろうプロジェクト アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布─2019年12月─


あたらしいセーターをもらったヤーハ君の笑顔は、はちきれそうです。

「新しいセーターが欲しい、欲しい、って思ってたんだ。願いが叶ったよ!かなえてくださった日本の優しい方々、本当にありがとう!いつか直接会ってお礼を伝えたいです。」


~ワールド・ビジョン・アフガニスタンのスタッフから~

配布を担当したスタッフのアハマドさんはこのように話してくれました。

「毎年、心のこもった防寒具を贈ってくださり本当にありがとうございます。子どもには成長に合ったサイズの服を着せてあげたいと思うのが親心ですが、ここアフガニスタンでは貧困のために、こういったことさえできない家庭が多いのが実情です。
子どもたちが贈り物を受け取る姿を見るとき、この子たちの祈りが届いていることを身に染みて感じます。『自分のことを思ってくれる人がいる。どこかに贈り物をしてくれる人がいる。』子ども一人一人が心のなかでこう叫んでいる瞬間です。」

世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろうプロジェクト アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布─2019年12月─

世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろうプロジェクト アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布─2019年12月─

世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろうプロジェクト アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布─2019年12月─

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