休日の午後。コーヒーをいれて、静かな時間を楽しむ。
みどりの机の上には、手づくりタウンで注文した新しいキットが届いていた。
箱を開けると、色とりどりの毛糸とムーミンたちの図案。
ムーミン パンチニードル 6種おまとめセットだ。
「これ、ずっとやってみたかったんだ」
ふわふわの毛糸に指先が触れた瞬間、心がすっとやわらかくなる。
パンチニードルは専用の針で布に糸を刺していく手芸。
プチプチと心地よい音を立てながら、糸が少しずつ形を作っていく。
そのリズムに合わせて呼吸がゆるみ、心まで整っていくのを感じた。
ムーミントロールの姿が少しずつ浮かび上がっていく。
毛糸の森やおうちが立体的に膨らみ、まるで手のひらの上にムーミン谷が広がっていくようだ。
途中で糸が絡まっても、それも楽しい。
北欧で大切にされているウェルビーイング。
上手くやることよりも、今この時間を気持ちよく過ごすこと。
その考え方が、手芸にもぴったりだと思った。
翌日、昼休みに同僚の遥に声をかけられた。
「みどりさん、この前のスカート直ってたよね? あの裾、すごくきれいだった!」
「うん。ムーミンの裁縫セットを買って、まち針で留めながら縫ったんだ。思ったより簡単だったよ」
興味深そうに頷く遥。
「いいなあ。実は私もボタンが取れたブラウスがあって、放置してるんだよね」
「それなら、今度一緒にやってみる?」
「えっ、いいの?ひとりだと、なかなか始める勇気が出なくて…」
「わかる、私もそうだったの。そういえば、この前パンチニードルっていうのを始めてね。ムーミンの図案がすごくかわいいの」
スマホで作品の写真を見せると、遥が目を丸くした。
「これ、自分で作ったの!? かわいい!私もやってみたくなっちゃう!」
ふたりで笑いながら話していると、昼休みの時間があっという間に過ぎていった。
同僚だった遥が、少しずつ“手芸仲間”になっていく予感。
毛糸のぬくもりと、誰かと分かち合える喜び。
それがまた次の“つくる時間”へのエネルギーになる。
第4話もお楽しみに!
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ムーミンとめぐる、手づくりの時間























